劉勇先生のハリドックセミナー

ハリドックの基本(4) 「未病治センターとしての治療院の役割」(2012.9)

未病を知る

最近漢方薬のテレビCMなどでよく使われるようになってきた未病治という言葉、それは事前に病気になる原因を察知して、体質や体調を改善して病気を予防していくことですが、病気の兆候となる身体各部位の不調は内臓の状態の反映であることが多いということを治療家は知っていなければなりません。

腕がかゆいという場合、ただ皮膚の表面がただれたりしてかゆいだけなのか、いろいろと判断していく必要があります。皮膚に出てくる異常な反応は、五臓六腑の機能が低下してきているサインであることが多いのです。ちょっとした症状でも体調面の悪化が始まる兆候として捉え、生活面での指導から体調コントロールのためのセルフケアの紹介まで、幅広く対応できる未病相談所としての機能を果たし、大病に繋がらないように未病治を実現するのが治療院の役割と言えるでしょう。

そのためにも治療家は未病という状態をしっかりと理解して患者に説明していく能力が求められます。鍼灸院が未病治センターになるために必要な条件は、患者自身を体調変化に敏感な人間に育てていくことなのです。治療家は患者に、自分の体調管理の見取り図を持てるようアドバイスしていかなければなりません。つまり、体調のどのような変化が病気のサインになるのかということを、ある程度自分で予想できる患者になることが未病治療には欠かせない条件になってきます。そうして微妙な変化を察知して早めに治療院で体調を整える。そうした自己管理能力を持った患者が育つことによって、未病治センターはより良く機能するようになるのです。

治療家の役割は患者ごとにその体質を把握して、健康法を考案すること、未病を放置して大病にならないように、健康のための道案内をしていくようなものだと言えるでしょう。


未病治の大切さ

患者には未病を軽視することの恐ろしさも伝える必要があります。いわゆる突然死はほんのちょっとした不調から危険信号が出ているもので、ほとんどが未病の放置から引き起こされています。がんなどの難病も同じことです。体調の異常を見逃し、その繰り返しのなかで大きな病が発生してくるのです。

人間の身体は、ハリドックなどで定期的に整えておかなければ錆びるのです。これは単なるたとえではありません。私たち人間の体内には電解質が多く含まれていますが、特に鉄分が多いのです。CTスキャンやMRIは磁石で体の鉄分を利用して診断する装置ですが、これは人間の身体が鉄分でできていて、しっかりケアをしないと錆びるということも意味するわけです。

どんな病気も最初は小さな未病から始まるということを忘れてはいけません。未病のうちに治しておくことが健康を維持していくということです。そのためにハリドックという未病治のためのシステムをしっかりと治療の中に確立し、患者に身体の錆落としの重要性をしっかりと認識してもらいましょう。


病気のレベルに応じた対応を

ハリドックという仕組みのなかでの未病治を目的としながらも、治療院には様々なレベルの患者が来院するのもまた現実です。当然患者の状態がどのようなレベルでどのような治療を必要とするかを判断する能力も問われます。

そのために、患者の病気のレベルを3段階に分けて対応することが大切になってきます。それは、病気に罹る前段階、病気に罹りはじめた段階、病気が悪化している段階の3つのレベルです。

ハリドックではできるだけ、最初の病気に罹る前段階で未病治を実現していくことを理想としますし、病気に罹り始めた状態の患者にも効果的な治療を行うことができるでしょう。しかし最後の段階で東洋医学的なアプローチでは治療が難しい患者に対しては、迷うことなく西洋医学の治療を勧める判断力も持たなくてはいけません。

また鍼灸の効果として、手術後のリハビリにも大きな成果を出すことができます。それも普段から鍼灸治療で体調管理を続けてきた患者ほど、術後の回復力に大きな差が出てくることがあるのです。

したがってハリドックを未病治センターづくりの要としながらも、鍼灸治療の効果が出しにくい病状に対しては、西洋医学の活用をしっかり患者にアドバイスし、術後などのリハビリ段階でまた東洋医学による回復を進めていくという使い分けを判断できるようにしておく。それは治療家に欠かせない能力です。どの段階でどのような治療法を組み立てるか、確かな診断力と治療技術を土台とした真の知識が求められるのです。


楽しい未病治センターで患者を健康に

治療院での対応のほかに、各段階での患者に適切な生活指導を行うことも治療のもう一つの側面として意識しなければなりません。

何よりも、そうした生活面でのアドバイスと治療内容がどのような関係にあり、東洋医学的にも何を意味しているのかを患者自身に認識してもらうことが、回復にも大きな効果を生み出します。患者が生活改善を含めた治療の全体像を知り、健康回復へのストーリーに納得することは、患者自身が治療過程をエンジョイすることにも繋がるため、心身にとても良い影響を与えるのです。

患者が自分の体質を深く知ることによって、受け身で治療を進めるのではなく、目的意識を持って自発的に治療を受け、楽しく生活を見直していくことこそが真の未病治なのです。「健康はあなた次第なのです」ということを気付いてもらうことが治療の目的と言ってもよく、そのきっかけを提供するのが治療家の役割なのです。そこまでいった治療家と患者の関係は、ホームドクターというよりもファミリーに近い関係を築いていると言えるかもしれません。

また理屈では分かっていても実行できないのが人間です。セルフケアが必要だと理解していても、さぼってしまって挫折してしまう。そうしたセルフケアが苦手な人のために、ケアを提供することができるのも治療家なのです。決して「なぜ言われた通りに自己管理ができないのか」などと叱りつけてはいけません。実行力の弱さを自覚している患者が治療家に助けを求めることも立派な健康管理の一つなのです。ただし、そのようなレベルのケアになってくると家事手伝いの世界に似てきてしまいますが(笑)。 

ちょっとした健康相談がすぐにできる治療院は、患者とのホットラインを持っていると言ってもよいでしょう。いつでも楽しく治療院に行き、気軽に相談できて、楽になって帰ってこられる。こうした治療院こそが未病治センターとしての理想的な姿なのです。


本企画は、2012年に『鍼灸ジャーナル』(緑書房)で全5回連載されました。



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